二年前に読んだ本の感想を放って眠りこけていたのだけれど、出戻り支度に。
町田康さんの「チンラ」を読みたくて買った。いちいち笑えて、ふと笑うだけでよいのかと読み直してみたりして、浅知恵なりに堪能。他にも信じられぬほどたくさんの短歌が載っていて、それらもまた興味深いのだった。世の中にこんなにも短歌が溢れているとは知らなかった。「短歌研究」と言うだけあって、どういう思いで詠んだものか説明があったり、このように読むことができると鑑賞の手引きのようなものがあったり、短歌を研究するなら読み続けるべき書物と思う。私は当分、この一冊で足りる。
ピエール瀧のテレビドラマも佐藤浩市の映画も見たし、原作は読まなくてよいのでは、と思っていたけれど、読んでよかった。情報量が全く違う。映像だけでは見逃してしまうひとびとの思いが事細かに描かれており、それらが身に沁みて、その場にいるかのように混乱、動揺した。
読後暫く、64という数字を見るだけで泣いてしまう人間になった。
ちょっと無理かもしれない、という設定がなくはないけれど概ねちゃんとしていて、時効が迫り、誰が何をしたのか興味は尽きず、面白く読むことができた。
勘弁してくださいと頼みたくなるくらい、これでもかと夫の父の奇行が書き連ねられており、人ひとりが見境を失くすと周囲がどれだけ影響を受けるか細かく密に描かれている。深刻極まりないのだけれど微かに長閑さがあって、人間の強さなのか、気の迷いなのか。何にしても、老人が増えること、介護が並大抵の苦労でないことを1970年代に取り上げていたのかと著者の先見性に感心する。そして、時を経て何ら有効な手立てがなさそうな現実の厳しさに棒立ち。
粘着質というしかない話で、追跡捜査係向きのように思うけれど、どうにもあり得そうにない展開。肩入れする登場人物の活躍に期待する者としては、もう少し現実味が欲しい。
面白かった。人間がどれだけ重病重症重体の死にかけであってもだれも死なない、そんな日が突然訪れる。とんでもなくおおごとな気がして生き死にについてあれこれ思ったりするけれど、作中には体裁とか面目とか利益とかを忘れぬ暮らしがあって、人間は浅はかなのか深長なのか逞しいのか図々しいのか。会話にかぎかっこが使われず、慣れるまで読みにくさを覚えたが慣れればどうということもない。数行ごとに考えを巡らせたくなる文言が散りばめられており読み終えるのが惜しいのだった。